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カリフォルニア州南部の被験地域は、サンディエゴから北に35マイルのところにあるサンディエゴ郡の町で、対照地域としては、ロザンゼルレスの南東30マイルに位置する町を選んだ。両都市は工業都市でも農業地域でもなく、多様な軽工業と観光の町で、オフィス街もある。どちらの町もメキシコ系アメリカ人の住民が多い(20%以上)。
サウスキャロライナ州の被験地域は、州北東部のグレートビーティー川(Great Pee Dee River)流域の町を選んだ。対照地域は同州中東部の町を選んだ。どちらの町もかつては農業と繊維を主な産業としていたが、現在では軽工業、中規模工業、製造業、小売業の町となっている。両都市ともに人口に占めるアフリカ系アメリカ人の割合が高く(約40%)、現在すでに地域ぐるみのアルコール予防活動に積極的に取り組んでいる。
地域社会は流動的で、複雑な体系を成すものである。したがって、アルコール関連事故の減少を目指した研究計画は縦断的なものであることが望ましい。この場合、各地域における対策導入の成果をアルコール関連事故件数の変化(従属変数)を通して評価するにとができる。介入前後の相違を多数の項目について評価するという従来の方法だけでは(たとえ無作為選択を行っても)、地域社会レベルへの介入の分析についても、結果の妥当性を損なう要因のコントロールについても、十分でないことが多い。地域社会レベルで結果の妥当性を損なわせる大きな要因の一つは、系統的な社会の傾向(ヒストリー)である。すなわち、被験地域と対照地域の従属変数に、「自然な」(しかし同等ではない)下降傾向(または上昇傾向)が存在するにとである。
実際の方法として最適なのは、ある時点から介入を中断する地域をコントロールするにとである。このことにより、それぞれの被験地域におけるプログラム実施前のべースラインを、介入しなかった場合の結果の予測値とするにとができるとともに、介入を中断した地域と比較するにとで、その時期固有の撹乱因子(前述の「ヒストリー」)をコントロールすることができる(Cook&Campbell,1979)。
研究計画は次のように表すことができる。
被験地域:OOOOOXXXXX O=従属変数の観察
対照地域:OOOOOOOOOO X=観察しつつ介入
上記の計画は、介入前後の値を比較するという準実験的手法と、計画期間全体を通して選られた多くの値を検討する手法を組み合わせることにより、妥当性を阻害する要因をコントロールしている。また、多面的観察により十分なデータを得ることで、時間経過に伴う自然傾向(ヒストリー)を特定し、外傷発生数の自然傾向と介入の影響とも混同を避けるにとができる。加えて、対照地域にも同一の測定法を用いるため、国や地方による影響(プログラム実施によるものではなく、地方、州、国家で起こった他の要因が原因となって被験地域の状況に変化が生じること)がない。このように、本研究における長期的混合計画(被験地域の試験開始前の状態を基準として、その後の変化と比較する方法と、長期に渡って被験地域と対照地域との比較を行うという方法を結合した計画)は、単に試験前後を比較する方法や、防止策介入がもたらした変化であるにとを証明するために対照地域を置いて試験前後の変化を検討する方法よりも確実性の高い方法である(Cook&Campbell.1979)。

 

 

 

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